ジリジリと照りつける日差し、まとわりつくような高い湿度…。日本の夏は年々厳しさを増し、熱中症のリスクは高まる一方です。熱中症予防の最も基本的な対策は「水分補給」ですが、ただ闇雲に水を飲めばいいというわけではありません。効果的な水分補給のポイントを知り、体の中から熱中症に強い体を作りましょう。
1. 「喉が渇く前に飲む」を徹底する
これが水分補給の鉄則です。喉が渇いたと感じる時、体はすでに軽度の脱水状態に陥っています。
- こまめに少量ずつ: 一度に大量の水を飲むのではなく、コップ1杯(150〜200ml)程度の量を1時間ごとに、あるいは30分ごとにでも、意識してこまめに摂りましょう。
- 時間を決めて習慣化: 「〇時になったら飲む」「休憩ごとに飲む」など、自分なりのルールを決めて、習慣にすると忘れにくいです。デスクワーク中や移動中も、常に手の届く場所に飲み物を置いておきましょう。
- 寝る前と起きた後: 睡眠中は汗をかくため、知らず知らずのうちに脱水が進みます。寝る前と、朝起きた直後には必ずコップ1杯の水分を摂るようにしましょう。
2. 水分と一緒に「塩分・ミネラル」も補給する
大量の汗をかくと、水分だけでなく、体に必要な塩分(ナトリウム)やカリウムなどのミネラルも失われます。水だけを飲んでいると、体内の塩分濃度が薄まり、「低ナトリウム血症」を引き起こす可能性があり、かえって危険です。
- スポーツドリンクや経口補水液の活用: 汗を大量にかくスポーツ時、屋外での長時間の作業時、体調がすぐれない時などは、水よりもスポーツドリンクや経口補水液が適しています。これらは、水分と電解質(塩分やミネラル)がバランス良く配合されており、効率的に補給できます。
- 注意点: スポーツドリンクは糖分が多く含まれているものもあるため、日常的な飲みすぎには注意が必要です。運動量が少ない場合は、水やお茶を基本とし、塩分は食事や塩飴などで補給する方が健康的です。
- 食事からの塩分補給: 味噌汁、梅干し、漬物、塩昆布など、普段の食事からも適度に塩分を摂ることを意識しましょう。
- 塩飴や塩タブレット: 外出時や作業中に手軽に塩分を補給できるため、携帯しておくと便利です。
3. 冷たすぎない飲み物を選ぶ
キンキンに冷えた飲み物は、一時的に体を冷やしてくれますが、飲みすぎると胃腸に負担をかけ、消化不良や体調不良の原因になることがあります。
- 常温〜やや冷たい飲み物: 体に負担をかけにくい常温の水やお茶、または少し冷えている程度の飲み物がおすすめです。
- 水分吸収効率: 人の体は、冷たすぎない飲み物の方が水分を吸収しやすいと言われています。
4. カフェイン・アルコールは水分補給にならない!
- カフェイン飲料(コーヒー、紅茶、緑茶など): カフェインには利尿作用があり、尿の量を増やしてしまいます。一時的に喉の渇きを潤す効果はありますが、水分補給には繋がりません。むしろ脱水を促進する可能性があるので、これらを飲んだら同量程度の水を別途摂る意識が必要です。
- アルコール飲料(ビールなど): アルコールも利尿作用が非常に強く、飲んだ量以上に水分を体外に排出してしまいます。「ビールは水分補給になる」というのは大きな間違いです。飲酒は脱水状態を招き、熱中症のリスクを高めます。
5. 高齢者や乳幼児、基礎疾患のある方は特に注意
- 高齢者: 喉の渇きを感じにくくなるため、意識的に水分を摂らせる声かけが重要です。排泄を気にして水分を控える傾向があるため、周囲がサポートしましょう。
- 乳幼児: 体温調節機能が未熟で、自分で水分補給ができません。周囲の大人がこまめに授乳や水分補給を促す必要があります。
- 基礎疾患のある方: 高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病など持病がある方は、水分や塩分摂取に関して医師から指示を受けている場合があります。必ず医師の指示に従い、不安な場合は事前に相談しましょう。
6. 水分補給のサインを見逃さない
自身の体の状態をチェックすることも大切です。
- 尿の色: 濃い黄色の尿は水分不足のサインです。薄い黄色になるまで水分を摂りましょう。
- 皮膚の張り: 親指の爪の付け根あたりを軽くつまみ、すぐに戻らない場合は脱水の可能性があります。
- 口の中の乾燥: 口の中がネバネバする、舌が乾いているなども脱水のサインです。
これらのポイントを意識して水分補給を行うことで、熱中症のリスクを大幅に減らし、今年の夏を快適に乗り切れるはずです。
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